- 給与明細を見たら、時間外労働の賃金が入っていない
- 会社側から定時に無理やりタイムカードを切らされてサービス残業を強いられている。働いた分の証拠を消されてしまう
このように、サービス残業の賃金問題でお悩みの人は非常に多いのではないでしょうか。
サービス残業は、今現在も日本が抱える問題の1つです。
昨今では働き方改革の促進に伴い、少しずつ緩和はされていますが、未だ多くのブラック企業が存在します。
「他の企業でもやっているから・・」、「日本では当たり前」などと諦めがちな人もいますが、サービス残業なんて本来あってはいけません。
未払金がある場合は、必ず請求しましょう。
そこで本記事では、残業代の未払金を請求するまでの手順をまとめました。
毎月長時間の残業を強いられるも、賃金がもらえずに頭を悩ましている。
残業代の未払いを取り戻せる!
目次
サービス残業は違法です!未払いは絶対にあってはいけない
まず大前提として覚えておいてもらいたいのは、サービス残業が違法であるということです。
なぜなら、労働基準法第37条にて「労働者が法定労働時間を超えて働いた場合は、割増賃金を支払う必要がある」と義務付けされているからです。
労働させたにも関わらず、賃金を払わないということは明確な違法に当たります。
ただ、中にはタイムカードを定時に切らせるなどして、証拠を隠滅させようとする悪徳な会社もあります。
そのため、サービス残業は、今なお問題となっているのです。
サービス残業を許すな!残業代の未払いを請求するまでの手順
では、どのようにして残業代の未払いを請求していけばいいのか?
その方法は、以下の手順となります。
- 証拠を集める
- 残業代を算出する
- 請求する
1つずつ見てまいりましょう。
ステップ①証拠を集める
請求するとはいっても、相手はサービス残業を強要する会社です。
普通に請求したところで、門前払いされるのは目に見えています。
まずは、相手の反論を阻止するために証拠集めから行いましょう。
タイムカード
タイムカードは出退勤の時間が記録されるので、これ以上ない便利な証拠です。
ただし、サービス残業をやらせるために定時で無理やり切らされてしまうと、証拠として残せなくなります。
社員IDカード
大手企業やビルの中に会社があるところは、社員IDカードを通してオフィスビルに出入りされることもあるでしょう。
そんな社員IDカードも出入り時に記録として残るので、証拠には申し分ありません。
ボイスレコーダー
ボイスレコーダーは、上司がサービス残業を強要してきたときなど、音声記録として残せます。
生の音声が残るので、これもまた強力な証拠になるでしょう。
勤怠記録
勤怠記録は出退勤の時間を記載するので、未払金を請求する際に役立ちます。
業務日報
業務日報には作業時間を記載することができるので、記録しておくことで残業時間の証明になります。
メモ
中々証拠が集まらないときは、ノートや手帳などにメモしておくとよいでしょう。
残業の時間や上司からの発言など、詳細が記載されているほど証拠として有利です。
他の従業員の声
サービス残業をさせる会社の事ですから、当然あなた以外の従業員にも強要している可能性があります。
であれば、あなたが立ち上がるのをきっかけに、他の従業員も協力してくれるかもしれません。
他の従業員と一緒に攻め込めば、会社も白旗を上げざるを得ないでしょう。
パソコンのログイン経歴
業務でパソコンを使用されている場合、ログイン・ログオフした時間が記録されるので、証拠に使えます。
業務上での通話やメールのやり取り
上司や取引先など、業務上で通話やメールのやり取りが行われていれば時間が記録されるので、証拠に使えます。
給与明細書
給与明細書は、毎月の支払額を証明するために必須です。
振込を確認できたからと、間違えて捨ててはいけません。
就業規則、雇用契約書
就業規則や雇用契約書には、会社の定めた労働条件や残業代の計算方法など、大事なことが記載されています。
これらの書面に記載されていない労働(サービス残業)を強いられた場合は、強力な証拠として会社に太刀打ちできます。
また、残業代を計算する際にも役立ちます。
ステップ②残業代を算出する
タイムカードや給与明細など、集めた資料を元に金額を算定していきます。
なるべく明確な金額を算定した上で請求しましょう。
ステップ③請求する
証拠が揃ったら、後は会社に直接請求するだけです。この交渉で双方が納得すれば、解決となります。
証拠がない・解決しない場合の対処法
「先ほど解説した手順を試したけど、上手くいかなかった」あるいは「証拠がないから請求できない」といった事態に直面する人もいるでしょう。
証拠がない場合や自分で解決するのが難しい場合でも、以下の方法で解決できます。
会社に開示請求を求める
手元に証拠がない場合、会社側に対して証拠の開示請求を行うことができます。
というのも、会社には労働時間の管理や把握をする義務があり、実際に労働基準法第109条で定められています。
(記録の保存)
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。引用元:労働基準法
該当期間分の記録がない場合、労働基準法違反となり会社側は罰せられます。
そのため、会社は労働時間の記録を必ず保存しているはずです。
ただし、証拠の開示請求は任意となるため、必ずしも会社側が応じてくれるとは限りません。
証拠保全命令
会社が任意の開示請求に応じない場合は、証拠保全命令といって裁判所を通じて証拠を提出させることが可能です。
ただ、裁判所の段階まで来ると労働者1人で手続きを行うのは困難なので、弁護士に依頼する必要があります。
労働基準監督署に申告する
ご自身で残業代の請求をして応じてもらえなかったときは、労働基準監督署に申告しましょう。
労働基準監督署は行政機関に当たるので、労働者よりも強い立場で会社側に指導を行えます。
ただし、労働基準監督署は指導が限界なので、法的に取り締まるのは難しいです。
労働審判
労働基準監督署に頼っても残業代が支払われない場合は、裁判所で労働審判を起こすという方法があります。
労働審判は裁判よりも早く終わるのが特徴で、最大3回の期日で行われます。期間で言うなら、3~4ヶ月ほどです。
ただし、労働審判は裁判と同じ観点で行われるため、残業代未払いの証拠も必要です。
事前に適切な準備を済ませた上で臨むようにしましょう。
労働組合
労働組合とは、労働者が利益や権利を保護するために、労働者で結成された団体です。
従業員は通常会社員よりも立場が弱いですが、労働者間で結束することで、企業と対等に交渉できます。
その存在は、憲法28条「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と法律でも認められているほどです。
労働組合には、従業員同士で結成される「企業内組合」と企業には属さない「一般労働組合」があります。
先に社内の労働組合と相談するのもいいですが、難しい場合は一般労働組合に加入するとよいでしょう。
最強の味方?弁護士に依頼する
最終手段として、弁護士への依頼が挙げられます。
法律を熟知した弁護士であれば、会社や裁判にも強い姿勢で臨めます。
また、証拠がない場合でも効果的な資料の集め方を教えてくれたり、資料が少ない中で残業代を的確に算出してくれたりします。
なるべく費用を抑えたいからと依頼を躊躇う人もいますが、確実性を考慮したら弁護士に頼むのが賢明な判断です。
「自分で直接請求したけど門前払いされた」、「証拠はないけど、何としてでも未払金を取り戻したい」といった場合は、弁護士への相談を視野に入れてみましょう。
依頼はともかく、相談だけなら無料で応じてくれるところも多いので、まずは色々な弁護士を当たってみるとよいでしょう。
要注意!残業代を請求できない事例
ここまでは、未払いの残業代を請求する方法をまとめてきました。
しかし、いくら残業代が未払いであっても、場合によっては請求できない場合があります。
本段落では4つの事例をまとめました。
みなし労働時間
みなし時間労働とは、実際に働いた時間に関わらず、1日の所定労働時間分働いたとみなす制度です。別名「裁量労働制」とも言います。
例えば、1日の所定労働時間が8時間だとしましょう。
そうした場合、5時間しか労働しなくても8時間とカウントされ、9時間働いても8時間とカウントされるわけです。
労働時間が統一されてしまうため、残業しても賃金を請求することが難しいです。
ただし、深夜残業や休日出勤など、明らかに法定労働時間(憲法によって定められた労働時間のこと)を超えている場合は、残業代を請求できます。
※法定労働時間については、下記ページをご参照ください。
会社で何かしら規定を設けられている
労働時間や残業代のことで会社が何かしら規定を設けていて、それに反した場合は請求できない場合があります。
例えば、先ほど解説したみなし労働時間が良い例です。
この辺の詳細は、就業規則や雇用契約書に書いてありますので、事前に必ずチェックしておきましょう。
ただし、規定があっても、会社側から残業を強要してきた場合は別です。
会社からの指示であれば、会社の責任になるので、労働者が有利になります。
タイムカードやメモ、ボイスレコーダーなどで証拠をきちんと保存しておきましょう。
会社が禁止しているにも関わらず自主的に残業を行った
先ほどの規定に続く内容ですが、会社によっては残業そのものを禁止したり時間を制限していたりする場合があります。
会社が残業を禁止しているにも関わらず残業を行った場合は、会社の規定を破ることになるので、当然未払金の請求はできません。
たとえ業務が終わっていなくても、会社が禁止している以上は規定に従いましょう。
残業代請求の時効を過ぎている
残業代請求には、3年の時効が存在します。
例えば、2021年4月に残業代の未払いがあった場合、2024年4月までに請求しなければいけません。
時効期間を過ぎると、請求できなくなります。
また、時効期間が3年になったのは2020年4月1日からで、それ以前の時効期間は2年です。
例えば、2020年3月に残業代の未払いがあった場合、2022年3月が時効となります。
未払いの残業代を請求すれば、時効期間を最長6ヶ月まで延長できます。
さらに、訴訟を起こしたり会社が支払いを認めたりすれば、最長10年まで時効を更新できます。
ですから、あくまでも請求を開始するまでの時効だと思っていただければ正解です。
退職ついでに残業代を取り戻せる?退職代行サービスにお任せ
「残業代を払いもしない会社に、これ以上居座りたくない・・。でも、未払いの残業代をもらうまでは辞められない」
このように、お考えの人も多いのではないでしょうか。
ですが、残業代の未払いは会社を辞めた後でも、請求することができます。
今の会社と1日でも早くおさらばしたい人は、退職してから請求するのも1つの方法です。
ただ、せっかくなら退職した後ではなく、退職と同時に残業代を請求してみませんか?
その方法とは、退職代行サービスを利用することです。
退職代行サービスは、労働者に代わって退職の手続を全て代行してくれます。
依頼が成立すれば即日退社も可能で、あなたは今後一切会社と関わる必要はありません。
通常は退職手続きのみですが、中には弁護士が運営するサービスもあります。
弁護士であれば会社側と交渉できるので、残業代の未払いや有給消化などのトラブルにも対応できます。
そのため、退職と同時に残業代の未払いを請求したい人は、退職代行サービスの利用を検討してみてください。
まとめ
残業代の未払いは、ご自身で解決できないことも多く、場合によっては弁護士の手も借りることとなるでしょう。
しかし、賃金の未払いは絶対にあってはいけないことで、ましてや労働者が譲歩する理由なんてありません。
証拠集めや金額の算出で少々手間はかかりますが、あなたの努力を無駄にしないためにも、請求に臨んでいきましょう。
また、1人で解決できない場合は、弁護士や労働基準監督署に相談するという手もあります。
労働者の味方はいますので、その辺も念頭に置いた上で請求に臨んでいただければ幸いです。
ただし、みなし労働時間や会社の規定など、残業代を請求できないケースもあります。
残業代を請求する際は、事前に就業規則や雇用契約書にきちんと目を通しておきましょう。